大坂なおみ選手が全米オープンで優勝した。
全米2回目、4大大会では通算3回目の優勝。
少し前まではテニスのメジャー大会で、日本人のシングルス優勝なんて夢のまた夢くらいに語られていたことを考えると、隔世の感がある。
そして今回の話題となったのが、優勝インタビューでの質疑応答である。
彼女はこの大会中、BLM(ブラック・ライブズ・マター)、黒人差別への抗議行動をスポーツの場に持ち込んだ。過剰な取り締まりなどで亡くなったと考えられる黒人の名前をプリントした黒いマスク姿で会場入りしたのだ。その異様ともいえる姿は賛否両論の物議を醸したが、彼女は決勝までの7試合すべてにおいて、この行動を貫いた。
インタビュアーは質問した。
7つの試合、7つのマスク、7つの名前、にどんなメッセージを込めたのかと。
これに対して大坂選手はこう返した。
あなたはどんなメッセージを受け取りましたか?
このシーンを見て、ぼくはデザイナー山本耀司の言葉を思い出した。
あるトークショーでのコメント。
パリでコレクションショーが終わった直後に楽屋に入ってきて、よくわからない大衆の代弁者みたいなジャーナリストが、ショーが終わった途端に人にマイクを突きつけて「今日のテーマは何だったんですか?」と。「見たんだろお前!」と言いたくなるような質問、口で言いたくないから服にしているのにっていう、一番ツラいところ、自分にとっては重いところを「喋れ」と言われるのがキツイねえ。
山本耀司は言う。
あなたが見たもの、それが全てだと。
人は何かを目の当たりにした時、意味や答えを求めたがる。そして今だと、ネットで検索して、誰かが出した「答え」を見て満足してしまう人も多い。
でも、本当はそれじゃいけない。
まず自分の感性に問いかけるべきだ。
私は何を感じているのか、と。
よくわからないならば、わからないことを素直に認めたうえで、自分で考える。
その過程に価値がある。
ある事象を前にして、詳細を知り、背景を知り、歴史を知り、さまざまな意見を知り、自分の考えにたどり着く。
そして、自分の考えが見えたのなら、それを表現することが大事だ。
方法は一つではない。
言葉でも、絵でも、音でも、何でもいい。
そこから、新しい世界が広がっていくのだ。
大坂選手はインタビューでこう答えている。
What was the message you got is more the question. I feel like the point was to make people start talking.
会話が始まることが重要です、と。
■今日のとくとく
大坂なおみ選手のインタビューを見れたこと
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