ジェシーのこと

おでかけ
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彼女は本当に現れた。

 

ラピッドシティのダウンタウン。
メインストリートスクエアと名付けられた中央広場。
ここで僕たち家族は、待ち合わせをしていた。

 

子どもたちは、地面から水が噴き出す遊び場で、無邪気に遊んでいる。

 

 

「Hi!」

 

 

ブラックデニムのGジャンにボトムスはホワイトデニム。
右側だけをきれいなエメラルドグリーンに染めた個性的なヘアスタイル。
白と黒でデザインされたキャップをかぶった女性が、こちらに向かって手を振りながら歩いてくる。

 

 

ジェシーだ。

 

 

奥さんは旧友との再会に満面の笑みで応じる。

息子、娘、僕の順番で挨拶をする。

傍らには彼女のお母さんも一緒に来ていた。

 

 

本当に会えるとは。

 

 

 

 

 

ここからの数時間が、かけがえのない瞬間(とき)になるということを、この時はまだ知る由もなかった。

 

 

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地上最速の女性

 

彼女の名前は、ジェシー・コムズ(Jessi Combs)という。

 

じつはちょっとした有名人だ。

 

公式サイトにならぶ肩書は以下の通り。

land speed record holder
professional driver
metal fabricator
TV personality
public speaker
brand rep & author

 

ある記事には、こう書いてある。

the fastest woman on 4-wheels

 

 

彼女は、jet car(ジェットカー)と呼ばれる4輪車で、女性ドライバーの世界最速記録を持っている。

 

公式で時速632km、非公式だと時速777kmという、とんでもない記録だ。

 

 

そんな人と、なぜ、僕らが待ち合わせをしているのか。

 

 

なんと奥さんが留学していた高校時代のクラスメイトだったのだ。

 

特に連絡をとっていたというわけではなかったが、ある時、SNSでジェシー見つけ、フォローをして、遠い異国の地から応援していた。

 

 

今回の渡米を前に、奥さんが僕に聞いてきた。

 

「連絡してみるのって、どう思う?」

 

僕はダメもとでダイレクトメッセージを送ってみたらと言い、奥さんはその通りにした。

 

届いてほしいと、願いを込めた。

 

すると数日後、返事が来た。

 

ジェシーは「会おうよ!」と言ってくれ、お互いのスケジュールを確認した。

 

いくつかの幸運も重なり、この日に会うことができたのだった。

 

奥さんとジェシーは、ランチをすることになっていたので、僕と子どもたちは少し立ち話をした後、家に戻った。

 

フォトセッション

 

家に帰る車の中で、息子が言った。

 

 

「一緒に写真を撮りたかったなぁ」

 

 

たしかに、ジェシーと奥さんの2ショット写真は撮ったが、子どもたちとの写真は撮っていなかった。

 

奥さんにLINEでそれを伝えると、なんとジェシーは一緒に写真を撮ろうと言ってくれ、奥さんを家まで送ってくれることになった(もともとは迎えに行く予定だった)。

 

 

ランチから戻ってきた奥さんは、まるでティーンの少女ようなキラキラした笑顔で車を降りてきた。

 

 

「あぁー、楽しかった!」

 

 

ひさしぶりの旧友との語らいが、とても充実した時間だったことは明らかだった。

 

「さぁ、写真を撮ろう!」

 

ジェシーとのフォトセッションだ。

 

息子と娘はそれぞれでジェシーと一緒にハイチーズ。

ちゃっかり僕もとお願いし、奥さんとジェシーと一緒にフレームにおさまった。

 

 

 

ホストファミリーのロンとミリー、ジェシーのお母さんも一緒になって談笑し、和やかなムードに包まれていた。

 

 

奥さんは彼女とコンタクトを取るための、あらゆる情報をもらっていた。
連絡先だけでなく、自宅の場所も教えてもらっていた。

 

「今度、遊びに来ればいいよ」

 

「横浜でオートショーがあるから、日本に行ったら絶対に連絡するね」

 

ジェシーは笑顔でそう言っていた。

 

奥さんはもっと英語ができれば…という歯がゆい思いをしたようで、次に会うまでに英語をブラッシュアップするという新たな目標をもらった。

 

ルーフにボートを積んだ大きなSUVでジェシーたちは次の目的地に向かい、僕たちはその後ろ姿が見えなくなるまで見送った。

 

そして、彼女との再会を信じて疑わずに、帰国の途についた。

 

RIP

 

日本の暑い夏もそろそろ終わろうかというある日、僕はリビングのソファで横になってウトウトしていた。

ふと気が付くと、奥さんが呆然と立ち尽くしていた。

 

 

「どうしたの?」

 

「…死んじゃったって」

 

「え?」

 

「ジェシーが…事故で…」

 

 

一瞬、何を言っているのかわからなかった。

 

 

「え、嘘…」

 

「本当だよ」

 

 

それだけ言い残して、奥さんは寝室に消えていった。

 

 

僕は傍らに転がっているスマホを拾い、急いで Google の検索窓に彼女の名前を打ち込んだ。

 

すべての名前を打ち込む前に、検索候補をヘルプする機能が、僕に現実を突きつけた。

 

そのワードは3つ目の候補として表示されていた。

 

 

「jessi combs 死亡」

 

 

海外のニュースサイトに片っ端から目を通し、Twitter やinstagram でもサーチをかけた。

 

そこには彼女の功績を称え、死を悼み、冥福を祈るメッセージが溢れかえっていた。

 

 

頭では理解しても、感情がまったくついていかない。

 

ただただ、ため息が出るばかり。

 

なぜ?

 

頭の中をぐるぐると駆け巡る。。

 

 

奥さんはジェシーとランチをした時、次のチャレンジの話を聞いていた。

自分のレコードにチャレンジし、今度は「女性の」ではない世界一を目指すと。

 

そして同時に、そのチャレンジがいかに過酷かということも聞いた。

前回、はじめて死の恐怖を感じたとジェシーが言ったとき、初耳だったジェシーのお母さんは、娘を案じる表情を浮かべていたという。

 

奥さんは彼女に何度も「気をつけてね」と言った。

 

 

きっと、いや、絶対に、準備には万全を期していたはずだ。

それでも、事故は起こる時には起きてしまう。

原因はこれから徐々に明らかになっていくだろう。

 

 

ただ、彼女はもう戻らない。。

 

 

ジェシーはどんな困難にもめげずに、立ち向かってきた人だ。

夢を追い続けている人は、自信とエネルギーに満ち満ちていた。

彼女と出会えたことは、僕たち家族にとって、夢のような出来事であった。

 

 

ずっとこの夢が続いてほしかった。。。

 

 

この夏、彼女に出会ったことを、僕ら家族はずっと忘れずにいようと思う。

 

We love you.

Rest in Peace.

 

 

 

 

 

Jessi Combs Official Website
The official website of Jessi Combs: land speed record holder, professional driver, metal fabricator, TV personality, public speaker, brand rep & author.
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